COLUMN
コラム
日本の建設業界は深刻な人手不足と高齢化に直面しています。建設業就業者のうち55歳以上が約35%を占める一方で、29歳以下はわずか11%程度という構成比です。特に設計や施工管理といった高度な専門知識を要するポジションでは、この高齢化が顕著であり、ベテランの引退による技術空洞化が懸念されています。
こうした状況下で、企業は即戦力となる人材を求めており、その中核資格の一つが2級建築士です。特に地方や中小規模事業者においては、大規模案件を担当する1級建築士よりも、戸建て住宅や中規模建築物を得意とする2級建築士のニーズが高まっています。
2025年4月から施行された改正建築物省エネ法により、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化されました。これまでは規模によっては申請が不要だった案件も、今後は設計段階から省エネ性能を考慮した詳細な図面作成や法令チェックが必要になります。
特に2級建築士が活躍する木造2階建て住宅なども対象となり、確認申請の手続きや説明責任が増加。これに伴い、設計・申請業務を担う人材への需要は急速に拡大しています。企業は「法改正対応ができる建築士」を求める傾向が強くなり、転職市場でも採用競争が激化しています。
転職支援会社のパーソルキャリア(東京・港)とインディードリクルートパートナーズ(東京・千代田)が行った調査によると、建設業界で人気が上昇している資格の上位は以下の通りです。
| 順位 | 資格 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 1級建築士 | 27.4% |
| 2位 | 宅地建物取引士 | 25.0% |
| 3位 | 管工事施工管理技士 | 13.5% |
| 4位 | 2級建築士 | 13.3% |
| 5位 | 電気工事施工管理技士 | 12.1% |
| 6位 | 建築設備士 | 3.5% |
| 7位 | 不動産鑑定士 | 2.8% |
| 8位 | 構造設計1級建築士 | 0.9% |
| 9位 | 建築施工管理技士 | 0.8% |
| 10位 | 建築積算士 | 0.7% |
のデータからもわかる通り、2級建築士は全体の13.3%を占めて第4位という高い人気を維持しています。特に宅建士や1級建築士と並ぶ「建設業界の中核資格」として転職希望者からも注目度が高まっています。
これまで建築士試験には実務経験が必須でしたが、制度改正により大学や専門学校で所定科目を修了すれば、実務経験なしでも受験可能となるケースが増えています。これにより若手が早期に資格を取得できるようになり、企業側も採用後すぐに戦力化できる人材を確保しやすくなっています。
さらに、試験科目やカリキュラムの見直しにより、設計力と法令理解を重視した実践的な試験制度へと進化。これが2級建築士のスキル評価をさらに高め、転職市場での価値を押し上げています。
コロナ禍以降、在宅勤務やライフスタイルの多様化を背景に、戸建て住宅や小規模オフィスの需要が増加しています。特に地方移住やリノベーションのニーズが高まり、都市部だけでなく全国で小規模設計案件が増えています。
2級建築士はこうした現場で顧客と直接やり取りしながら、設計・申請・監理まで幅広く担当するケースが多く、企業にとって「顧客接点を持つ設計者」として重宝されます。これにより、ゼネコンだけでなく工務店、住宅メーカーでも採用枠が拡大しています。
以上の要素を総合すると、2級建築士が転職市場でこれほど求められているのは必然といえます。
今後も法改正や住宅需要の多様化により、2級建築士はますます存在感を高めていくでしょう。転職希望者にとっても、企業にとっても、重要なポジションとなることは間違いありません。
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