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【施工図】とは何か?その重要性を作成目的や作成者、設計図との違いで紹介

施工図 施工管理

施工図という名称は、設計図に比べると一般的な認知度は低いかもしれません。しかし施工図は施工者が実際に工事を施工するのに欠かすことができない重要な図面です。

施工図は生産設計とも呼ばれ、さまざまな作成図面で構成されます。

施工図について、作成目的や作成者、設計図との違いなどから説明し、その重要性について紹介します。

施工図】と【設計図】では作成する目的が違う

施工図と設計図では、作成の目的が異なります。 そのため、図面に描かれる内容や情報の詳細度も大きく変わります。

● 施工図は現場施工のための実務図面

施工図には、技術者や職人が工事を行ううえで必要となる情報が、非常に細かく記載されています。 たとえば、仕上げ材料の厚み、設備配管の取付け位置、構造部材の細かい寸法など、実際の施工に関わる具体的な内容が含まれています。

この図面をもとに、工事の工程や品質、原価、安全管理、そして協力会社との連携までを計画・実行します。 施工図は、建築施工図と設備施工図の大きく2種類に分かれます。

  • 建築施工図:コンクリートや仕上げ、建具、建築金物などの詳細を図示
  • 設備施工図:空調、給排水、電気などの機器や配線経路を反映

これらをもとに、現場の状況や他業種との取合いを確認・調整しながら、無理のない施工計画を立てるのが重要です。

● 設計図は建物の全体像を示すための図面

設計図は、発注者の要望や建物の基本的な計画内容を図面化したものです。 設計者が構想し、建物の外観や空間構成、設備の配置などを一通り描いています。

  • 基本設計:配置、構造、用途、意匠の方向性を決める
  • 実施設計:意匠図、構造図、設備図などを詳細に作成し、確認申請のベースに

設計図は建築主の合意や行政手続き、入札の際の仕様提示に使われ、施工図よりも抽象度が高く、実際の施工に必要な細部は省略されていることが多いです。

【施工図】は誰がどのように作成するのか

施工図は、請負会社やその協力会社、又はそこから依頼された施工図作成会社が作成します。

これに対して設計図は、設計事務所や建築メーカーなどに所属する建築士が作成します。

それぞれ詳しく説明しましょう。

施工図は施工者が作成する

施工図は施工者サイドの業者が作成します。

ゼネコンや工務店、ハウスメーカーなど、建設事業を多く抱える会社では、自社で施工図を作成できる部署をもっていることが多いです。コミュニケーションが取りやすいため、スピーディーで納まりの良い施工図が完成しやすいというメリットがあります。

またこれらの会社の協力会社が依頼されて施工図を作成することもあります。

以上のようなケースとは別に、施工図専門会社が依頼を受けて作成することも多いです。専門会社はさまざま分野の施工図のエキスパートの集まりなので、ワンストップで品質の高い施工図を作成することができます。

施工図専門会社であっても机上だけの作業ではなく、実際に何度も現場に足を運び、実践的な施工図を作成することは言うまでもありません。

設計図は建築士が作成する

設計図は、設計事務所や建築メーカーなどに所属する、建築士が作成します。国家資格である建築士には1級、2級、木造の3種類あり、設計できる建物に違いがあります。

たまに見聞きする建築デザイナーや建築家という方も、ほとんどの場合、建築士の資格をもっています。

建築士法には、「設計とはその者の責任において設計図書を作成すること」とあります。

建築物は私たちの生命財産に直接関わるものですから、その基本となる設計にミスは許されません。一定の知識や技術、実務経験があると認定された方だけが、その責任を負うことができると定義されているのです。

建築士は、発注者の意向と予算を考慮しながら、「建築生産」の一環として設計図を描出します。

※建築生産|建築物の企画・計画・設計・施工、さらに維持管理から建物がその使命を終え解体されるまでをいう

【施工図】は施工業者にとって最重要の図面

施工図 施工管理

施工図は、施工業者が実際の施工を行うための“最終図面”です。 意匠、構造、設備といった各分野の調整が完了し、現場での施工に必要なすべての情報が盛り込まれています。

● 施工図に基づいた事前確認が施工のカギ

施工図を読み解くことで、施工のポイントやリスクが事前に把握できます。 たとえば、以下の点を事前に検討できます:

  • 既存の道具や材料で対応できるか
  • 工期内での納まりに問題はないか
  • 各職種との工種調整が必要か

施工図をもとに、現場での協議や計画修正を行うことにより、工事の手戻りやトラブルを未然に防ぐことができます。

● 問題点の早期発見と対策が可能に

施工図を各関係者で共有しておけば、工事が始まる前に以下のような問題に対して手を打てます:

  • 配管や設備の干渉
  • 意匠と構造の矛盾
  • 工法の非現実性

これにより、実際の工事中に起こるであろうミスや再施工のリスクを減らすことができ、結果的にコストと工期の両方を守ることにつながります。

まとめ

ここまで施工図の重要性について紹介してきました。施工図は施工業者に渡される最終図面であり、最重要の図面です。

施工図は、設計図と並んで建築生産における重要な工程を担う図面です。 設計者が描く設計図を、現場で実現するための「具体的な実行計画」としての役割を担っています。

施工業者にとっては、施工図がなければ現場を動かすことはできません。 関係者間での情報共有や工程調整、品質管理、安全対策など、あらゆる現場マネジメントの基本となる資料です。

今後、設計や施工、あるいは建築発注に関わる機会がある方にとって、施工図の重要性を知っておくことは非常に有益です。

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